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徒然ファンタジー11

ジェシカが人間に変身できるようになって一か月が経とうとしている。リリアンとジェシカの生活にはこれと言った変化はない。ただ、電車で買い物に出掛けたあの日リリアンが密かに購入していた物をジェシカにプレゼントした事によってある特殊な現象が起っていた。


あの日ほとんどクタクタで家に帰ってきたジェシカは部屋の中で倒れ込んでいた。

「あー、疲れた。もう歩くの嫌だ…」

当然の感想といえばそうだ。慣れない事をすれば誰だって疲れる。いつも15分程度の散歩しかしていないジェシカは歩くという事でこんなに疲れるとは思ってもみなかったのである。それを笑顔で聞いているリリアン。


「お疲れ様。ところで、これあなたにプレゼントよ」


「ぷれぜんと?」


そう言ってリリアンはジェシカに男物の洋服を渡した。

「これって?」

リリアンの意図がよく分からないジェシカ。


「それ着てみてよ。多分似合うと思うわよ」


「でも、俺いまも服着てるよ?」


素朴な疑問にリリアンは苦笑しながらこれに答えた。


「いつも同じじゃ、いくら匂わないからといってもやっぱり変よ」


ジェシカが変身した時にいつも来ている洋服は何故か汚れない。だがいつも同じだったので、リリアンは何となく別の服を着てもらいたいと常々思っていた。ただその気持ちがジェシカに分るかと言うと難しいだろう。


「変かな?」


「変よ。それにこっちの方がお洒落よ」


リリアンに強く勧められたので、よく分からないがとにかく渡されたものに着替えてみようと思ったジェシカ。ただ着脱はほぼ初めてなので、かなり苦戦して、途中からリリアンが手伝う事になった。しっかりは見ていなかったものの上着とTシャツを脱いで上半身裸になったその身体をちらっと窺って、<やっぱり男の子なんだな>と実感したリリアン。実際、ジェシカは万遍なく筋肉がついているのだ。


「どう?」


新しい服を着て、リリアンに見てもらうジェシカ。いつもは『キジトラ』の模様が関係しているのか、下が茶色で上が白という何とも地味な格好をしているのだが、この日リリアンが買ってきたのは上が緑で下が普通にデニムだったから、そこそこ年頃の男の子という印象を与える。


「うん、いいね!思ったより素敵。鏡をみてごらん」


あまり頻繁には見ていなかったがジェシカは一応自分の顔とか姿を鏡で確認してはいた。それが自分なのだということがいまいち実感できないけれど、確かに自分はこういう姿をしているということは了解していたのだ。そして今、少し前とは違った姿で立っている鏡の中の人物を見て、ジェシカは感心していた。


「へぇ~、俺こんな感じになるんだ」


よく昼間のテレビなどであるファッションによる変身。ジェシカが猫から人間に変わるほどではないにせよ、人間は着ている服によっても大分印象が変わる。少なくとも人間の目で物をみている今のジェシカにとってはこれは「大きい変化」のように思えた。ちなみにこの時、先ほどまで着ていた服は跡形もなく消えてしまっていた。と言っても、リリアンは今目の前で新たな姿を披露しているジェシカ事しか気にならないのか、あまり大した事とは捉えていないようだった(シェリーこと立華京子だったらこうはいかないだろう)。



ただ、この後起った少しばかり意外な事態にはさしものリリアンも驚かされた。



その日さすがに疲れたという事で一度猫の姿に戻って眠ることにしたジェシカだが、その際服はジェシカと一緒に消えたというような事は起らず、服は慣性の法則と重力に従い、姿が猫になったジェシカの身体をすり抜けるように落ちて行き、猫のジェシカは服の中から這い出てきた。ここまでの事はある程度予想していたのかリリアンは何も気に留めなかったのだが、次の日にジェシカを再び人間の姿にした時、彼女はその服装に驚かされた。


「ジェシカ!!その服はどうしたの?」


「え?」


言われても何の事か分らないジェシカ。


「いつもと違うじゃない!!」


リリアンが見たのは、その前日まで来ていた「いつも」の服とは違ってどちらかといえば着替えさせた服の系統に近い格好になっているジェシカであった。


「そういえばそうだね」


「一体どういう事!?」


リリアンがこの現象を不思議に思う前にそれ以前の事も気にするべきなのだが、リリアンの常識では「服」は重要な事らしい。


「う~んよく分かんないけど、こういう服が良いなって思ったからなのかな?」


「…そんな理由で服が変えられるんなんて納得がいかないわ…」


とはいえ実際「服」を自分の変身の一部として捉えるならば、こういう事態は想定される事であり、現実的にどうもそうらしいので、リリアンは納得がいかないながらも納得する事にした。その日から、ジェシカは自分の気分次第で色々な服で変身する事が出来るようになっている。ただ、服はジェシカのイメージに影響されるのか時折どうかと思うセンスの服装をしている時があるので、リリアンはだんだんジェシカには「おしゃれ」というものを理解してもらわなければという気持ちになっていた。



という事があってか、それ以後も他の人の着ている服とか、店で売っているような服を勉強させるためにリリアンはジェシカを伴って街に出掛けている。その成果はまあまあ出ているようで、一か月になろうとする頃、ジェシカはそれなりに身だしなみにも気を付けるようになっていた。
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